【緊迫感ゼロ】JAL機がエンジントラブルで緊急脱出を行った件について

Category : 航空事故
JALのB737-800が新千歳空港でエンジントラブルを起こし、緊急脱出を行う事態にまで発展した。現時点までの事故原因の推測は、激しい降雪の影響でエンジン内部に着氷し空気の流れが悪くなってオイルが異常加熱したというものである。(本記事を書いている時点のWEB情報による。正しい原因である保証はない。)

エンジンがトラブると結構な確率でキャビン内に煙が充満する。これはエンジンが絡んだインシデントの典型だとも言える。何故エンジンとキャビンが関係しているかって、それはエンジンから与圧・空調に使う空気を取り込んでいるからだ。もっと簡単に言えば、エンジンから吸い込んだ空気をエアコンに使っているということである。

取り込む空気のことを抽気(Bleed Air)と呼び、Bleed Air System(抽気系統)と呼ばれる立派な系統も作られている。航空機システムでいうところの与圧系統、空調系統の前段にいるのが抽気系統であると思ってもらえばいい。そういうわけで、エンジンが過熱したりすると、この抽気系統から煙を取り込んでキャビンに流してしまうわけである。

ボーイングの飛行機では787から、エンジン抽気を与圧・空調用には使わなくなった。抽気を取るにはとるのだが、エンジン内のインテーク防氷に使うのみだ。だから787では同様のエンジントラブルによるキャビン内への煙の充満という事故は起こり得ないのではないかと思っている。まぁそれは余談として、今回は737という従来型の抽気系統を持つ飛行機で起きた事故であるため、当然のごとく煙の混じったエンジン抽気がキャビン内に入り込んだ。

この事故では出発を諦めゲートに戻ろうとした際に緊急脱出を行った。もしかしたらスポットまでは走っていきそのままブリッジに着けて乗客を降ろすという決断もあったかもしれない。しかし機長は「これはマズい」と感じ、あの大雪の中に乗客を放り出した。なかなか難しい決断だったと思う。相当煙が充満したという人もいれば、匂いは酷かったが煙は見えなかったという人もいる。実際にどれだけ事態が深刻だったかは、当事者しかうかがい知ることはできないが、強烈な異臭に「スポットまで戻れない」と感じたパイロットがあの雪の中、緊急脱出を決断したことは事実である。

緊急脱出を行うほどの事故は滅多に起こらない。そういう意味で今回の事故は非常に稀な事故である。それ故に報じられるときのインパクトは結構大きい。脱出シュートを降りる乗客の姿は緊迫感を映し出し、マスコミにとっては格好のネタである。しかし今回の事故は飛行前に起きたということや、実際に火災が起こっていないこともあり、「実は大した事故じゃなかった」というのが「声には出さないけどみんなそう思っている事実」になっている気がする。

乗客の余裕の脱出が滑稽である。外からスマホで動画を撮っている人はまだマシなほうで、脱出用シュートを降りながら撮っている人もいた。いかに緊迫感のない脱出劇だったかがよく分かる。「キャー」とパニックになっている人がいたとあおるマスコミ報道もあるが、それはごく一部であり、映像を見る限り大部分の人が笑顔だ。薄着で逃げている人は少しかわいそうではあるものの生命の危機のようなものは全く感じ取れない。

既に記事にも上がらなくなった今日だが、面白いのは、最近はライブ感を持った映像が続々と出てくるようになったことだ。皆スマホで動画を撮影するようになり、マスコミのような仕組まれた映像は少なくなった。個人の動画は手ブレがひどく見にくいものの、事態をリアルに写すものがほとんどだ。マスコミは都合の悪いものは写さないが、個人はありのままを写す。だから緊迫感のない脱出劇だとすぐにバレる。

マスコミはこの事故を無理やりまともに報じ過ぎであり、「寒いところに放り出された」とか「20分も外で待たされた」とか「ろくな説明もなしに見舞金を渡された」とかそういうJALに対する不満のコメントを流しているが、気付いている人は気付いているように、実は大した事故ではなかったのである。JALは何も悪くなく、機長が適切な判断を行っただけの話だ。

「いいネタが撮れたと」か言って笑っているヤツらがいることをもっと報じて欲しいものだ。「JALの対応が悪い」とかそんなありきたりな内容は放送しなくてもいいから、「実は機内は冷静だった」とか「いかに個人が自己中心的に振る舞ったか」とか、たまには別の視点で報じて欲しいものである。

最後に。「脱出の恐怖」を引き出そうとするインタビューはナンセンス。今回は逆に「恐怖なんか感じました?(感じませんでしたよね?)」的な聞き方をしてもいいくらいだ。「航空事故=恐怖」なんて構図は既に崩壊しているのである。そこに気付けよ。

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アシアナ航空A320、広島空港で着陸に失敗【報道の正確性について】

Category : 航空事故
番組の途中ですが、急遽番組を切り替えて放送します。

アシアナ航空が広島空港で事故を起こした。上空から撮影した画像を見たり、色々な報道記事を読んで、アシアナ航空のA320は、

ローカライザーアンテナに接触した

とうのがどうやら事故の直接的な原因のようである。

サンフランシスコでも空港の護岸に脚を引っ掛けて着陸に失敗した事故が思い出されるが、

アシアナはまた手前で引っ掛けたか!

という印象を強くする事故である。「何でそんなに手前に降りるの?」と。
(過去記事:アシアナ航空サンフランシスコでの着陸失敗事故の真実)

サンフランシスコの事故は進入時の速度が問題であったが、今回はどうやら視界不良が大きく関係しているようである(推測)。(事故原因はサンフランシスコとは全く異なると思われる。)

さて、今回アシアナのA320はどのような進入を行っていたかであるが、このチャートを頼りに少し解説したい。(どれが正しいか分からない報道を頼りに、最も可能性の高い事柄を推測して書いている。)

当時、広島空港では東側から進入を行っていたようで、進入方式としてRNAVアプローチを使っていた模様である。

RJOA-RNAV28-01.png

このRNAVアプローチとは、FMS(Flight Management System)の誘導を頼りに降りる方法である。空港に設置された着陸装置からの電波に頼らず、自分の持っている装置だけで考えて降りるという最近主流になっている少しインテリジェントな進入方式だ。特に変わった進入ではなく、ごく一般的に使っている方式である。

19人乗り以下のコミュータ機を除けば、最近の航空機のほとんどは離陸直後からLANV/VNAVと呼ばれる横と縦の自動操縦を使用しており、飛行するコースを事前に作っておけばLNAV/VNAVが自動で航空機をコースに沿って飛ばしてくれる。以前、着陸時にはLNAV/VNAVを使用できなかったのであるが、装置の精度の向上により着陸直前までLNAV/VNAVが使えるようになった。分かりやすく言えば、

着陸直前までLNAV/VNAVを使う

というのがRNAVアプローチと呼ばれるものだ。

チャートにも(GNSS)とあるようにGPSからの電波を受信しないと成り立たない方式ではあるものの、基本的には外部の無線航法施設(VOR、ILSなど)に頼らずに飛行できる方式として、最近多くの空港に設定されつつある着陸方法である。世の中は無線航法施設を廃止していく方向にあり、外部施設に頼らず自律的に自動操縦できる方式にシフトしてきているのである。

ただこの方法は、視界が悪い時にはあまり有効ではなく、電波を使用して降りるILSよりは精密度が低い。もう少し具体的に言うと、「精密進入」と呼ばれるILSアプローチよりも高い高度で滑走路が見えないと着陸できない方式である。ちなみにRNAVアプローチは「非精密進入」の区分である。

チャートの赤丸部分がそれを表していて、MAPtというのはMissed Approach Pointという意味であり、滑走路が対地(着陸地点から見た高さ)433フィート(131m)まで降りたところで見えなければ、着陸をやり直さなければいけないことを意味している。

広島空港では、今回とは反対側の滑走路から降りた場合、ILSが使えるため、着陸のやり直しを決める高度は、最も精度が悪いもの(CATI)を使ったとしても、200ft(61m)である。ILSの方がより低い高度まで降りられることになっている。つまりILSの方がより視界が悪くても降りられるというわけである。

ただ、今回はILSで降りられる方向とは逆向きの滑走路を使っていたため、RNAVアプローチを使用していたと思われる。使用する滑走路の向き風向きによってほぼ自動的に決められる。(向かい風で着陸するように滑走路の使用方向は決まる。)

大体それがRNAVアプローチの解説だ。


では、色々な報道記事を読んで僕が感じたことを書きたい。事故原因はまだわかっていないのであれこれ言うのは避ける。何故なら、事故原因が分かる前にアレコレ言ってしまうと、後から「ギョッ」とするような事実が現れて、思いもよらない事故原因だったということにもなりかねないからである。

僕は自分のブログで、航空事故関係の報道記事の正確性、適切性についてアレコレ文句を言っているので、今回もその類の記事だと思って読んでもらえれば嬉しい。


<1つ目の記事>
アシアナ機、精密誘導なしで着陸 超低空で進入か

記事では、「パイロットが着陸機を電波で誘導する精密な計器着陸装置(ILS)を使えない状態で着陸した」と書かれており、「同局によると風向きの影響で、装置を使えない滑走路の東側から入るように管制官が指示を出したという。」と続いている。

この記事をなんとなく読んでしまうと、「パイロットはILSを使いたかったのに、ILSを使えない方向から進入しろと管制官に言われたので事故に遭遇した」みたいに捉えられてしまう可能性があり、不適切な記事だと思う。

確かに書いてあることは間違ってはいない。空港にはその時間の使用滑走路方向というものがあり、基本的に管制官から指示されるものだからである。ただ、この事故では管制官は何も悪くないと思われるのでそこに注意して読まなければ、事故の本質を間違えてしまいそうである。


<2つ目の記事>
事故直前までレーダー正常に機能~広島空港

はっきり言ってお粗末な記事。こんなことが書いてある。

「広島空港事務所は15日午前に会見を開き、レーダーが正常に機能していた事を明らかにした。」続いて、「広島空港事務所・久貝誠総務課長「装置については事故発生の直前まで正常に作動していたとの報告を受けている」と書かれている。

そもそも東側から進入する際には、ILSは使わないので「装置(レーダー)は正常に作動していた」というのは全く持って妙な回答である。(ホントに広島空港がそう説明したのか?画像が見られないので未確認)

記事の前半に、「滑走路手前に設置された、誘導用に進入方向と幅を示すローカライザー(誘導用レーダー)は破損し、機体が接触した可能性が出ている。滑走路手前の地面はえぐられ、その先で停止した機体にはレーダーの一部とみられる部品が引っかかっていた。」とあるので、上記のレーダーというものは進入管制用のレーダーではなく、ローカライザーを指すものと思われる。(ローカライザーはそもそもレーダーじゃないけど…。)

「使用していないローカライザーが正常だったこと」は今回の事故と全く関係がないので、この記事は全く持って意味のない、そして価値のない記事である。


<3つ目の記事>
アシアナ機事故は手動着陸の「滑走路28」 操縦ミスか

これは非常に適切な記事である。ただタイトルがあまりよろしくない。「手動着陸」という部分がダメで、「非精密進入」とするのが正しい。確かに最後の最後は手動で着陸するわけだが、ILSだって一部の超精密なものを除いて最後は手動で着陸させるわけだし。逆にRNAVアプローチだって着陸直前までは自動で進入を行うことが出来る。ILSもRNAVも途中まで自動で、最後は基本的に手動。両者でそこは同じなのだから、「手動着陸が云々」とタイトルに書いてしまうとやや誤解を招く気がする。しかし、タイトルを除けば非常に詳しく、そして正しく書いている記事である。


たまに航空事故があると、僕はブログに、

報道は疑って読まないといけない。

と書いているが、まさに今回もその通りのことが起こっている。ニュース報道は、専門家の書くもの以外、基本的に素人が取材をして素人が書いているため、内容に間違いがあることもあるし、全く持ってトンチンカンなことを書いているものもある。

玉石混交の記事の中から「アタリ」を見つけるのは難しい。読者の方々も、注意して報道記事を読んで欲しいと思う。


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アシアナ航空サンフランシスコでの着陸失敗事故の真実

Category : 航空事故
2013年7月、サンフランシスコ空港で起きた
アシアナ航空214便(機種:B777-200ER)の着陸失敗事故について、
米国NTSB(国家運輸安全委員会)の発表により、コックピットでどんな操作が行われ、
機体がどんな状態に陥ったのかが分かってきた。
ここに僕自身の調査結果を示したい。

以下に示すのはあくまでも独自の調査と独自の知識によるものであり、
公式な見解とは異なる可能性があることをまずはご理解頂きたい。

その前にNTBS作成の操縦アニメーション(YOUTUBE)を見て欲しい。
進人から墜落までの一連の操作と
オートパイロット(自動操縦装置)、オートスロットル(自動推力装置)の
モード遷移が分かるようになっている。
下記と照らし合わせながら、是非ともご覧頂きたい。

NTBS作成の操縦アニメーションはこちら


20140625_OZ214_VS_DES.png

アシアナ航空214便はRWY28L に向けて降下を開始していた。
通常実施されているILSアプローチは点検中で使用できなかった。
当初の降下経路は、通常の降下経路の上にいた。
オートパイロットの設定(縦)を昇降率モード(V/S)に入れ降下を行っていた。
ここまでは何ら違和感がない。

次に行われた操作が惨劇の始まりであった。

20140625_OZ214_FLCH_ON.png

高度1600ftまで降下したとき、突如高度変更(FLCH)ボタンが押された。
(FLCH:フライトレベル・チェンジ)
FLCHボタンが押されると、機体は高度窓値に設定してある高度まで上昇しようとする。
214便はゴーアラウンドに備え設定していた高度窓値3000ftへと上昇を始める動作をした。


20140625_777MCP.png

何故FLCHボタンが押されたのかは分からない。
隣にオートパイロットをディスエンゲージ(OFF)するボタンがあるので、
もしかしたらそれと間違えたのかも知れない。

前述の通り高度窓値を3000ftに設定していたため、FLCHボタンを押すと上昇に移る。
従ってスロットルレバーが前に出る。
しかし直後、パイロットは間違いに気付き、オートパイロットをディスエンゲージ(OFF)した。
そしてスロットルレバーをアイドルまで戻した。

オートパイロットをディスエンゲージ(OFF)すると、手動操縦になるため上昇は止まる。
そしてスロットルレバーをアイドルに戻したのは、
FLCHモードに入って増した推力を減じるためである。


この誤操作への対応が墜落への直接の事故原因となった。
高度変更モード(FLCH)とオートスロットルは連動していて、
FLCHボタンを押すと、オートスロットルはTHRモードと呼ばれるモードに入る。
このTHRモードが鬼門だった。

THRモードでは、スロットルレバーを手動で8度以上操作をすると、
HOLDモードと呼ばれるモードに入るように設計されている。
(パイロットがオーバーライドできる設計になっていると考えるのが妥当)

FLCHボタンを押し、オートスロットルはTHRモードに入ったのだが、
すぐにスロットルレバーを手動で戻したため(8度以上操作したため)、
オートスロットルはHOLDモードに入ってしまった。

HOLDモードとは、「基本的に」離陸時や降下時に入るモードで、
オートスロットルはエンゲージ(ON)されているものの、
レバーを動かすモータとは切り離され、手動でレバー位置を調節できるモードである。
離陸時には離陸中止に備えてスロットルレバーを自由にし、
降下時には推力を任意に調節できるようにと設計されたものである。

20140625_OZ214_manual.png

THRモードの時にスロットルレバーを手動で8度以上操作をすると、
HOLDモードと呼ばれるモードに入ることは、
上記の通り、マニュアルでも注意喚起がなされている。


20140625_OZ214_HOLD.png

話を戻すと、FLCHボタンが押されたため、上昇しようとスロットルレバーは前進したのだが、
直後に手動でスロットルレバーを動かしたため、HOLDモードに入ってしまった。
簡単に言えば、オートスロットルはエンゲージ(ON)されているものの、
速度を手動でコントロールするモードに入ってしまったということである。

当然、PFD(最も主要な計器)にはHOLDモードであることが表示されている。
しかしこれに気付かずに最後まで行ってしまった。
推力はアイドルに絞られたままでコントロールはされていない。
従って機体の速度はどんどんと低下していく。

そして気付いた時には手遅れだった。
接地直前、ゴーアラウンドを宜言しスロットルレバーを前進させているものの、
機体の反応は遅れるため、上昇するまでには至らなかった。

仮にFLCHボタンを押した後のスロットルレバー操作で、
オートスロットルがディスエンゲージ(OFF)されていれば、
音声や表示で何らかの注意喚起がされるため、速度に注意が向いた可能性が高いが、
HOLDモードに入り込みディスエンゲージ(OFF)されなかったため、
パイロットは「速度は制御されている」と信じ込んでいたものと思われる。
この勘違いが致命傷となった。


20140625_OZ214_CRASH.png


米国のNTSBは、

自動操縦システムへの過度な信頼と

複雑なシステムヘの不十分な理解が原因

と結論付けている。
僕も個人的にそう思う。
速度は着陸時には最も重要な計器表示である。
速度を見ずに着陸するなんてことなど有り得ないことなのである。

そもそも最終進入中にFLCHボタンを押していることが間違いなのだが、
その後、適切な回復操作ができずに事故に至っている。
人間は必ず間違いを起こす。
しかしその後の修正が大切なのだ。
この事故は、

誤操作を誤操作で修正して事故に至った典型的な事例

であると言えよう。
パイロットしての技量が疑われても当然である。

誤操作の内容がやや専門的なため、一般の報道では単なる操縦ミスとして片付けられているが、
調べてみると結構奥深いミスの連鎖になっていることが分かる。

僕はパイロットでもないし、調査官でもない。
従ってこれ以上の言及は避けるが、
上記の通り事故に至るまでの過程だけは述べさせてもらった。
自動操縦に関する背景知識がないと理解できない部分があるかも知れないが、
大体の雰囲気だけでも伝われば良いと思う。


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アシアナ航空事故について新聞報道に思うこと。

Category : 航空事故
今日の日経新聞夕刊、社会面の記事。

20130708_01.jpg

「アシアナの事故、どんな見出しで載ってるんだろ」って思ったらこれだった。

日経新聞って本当にバカだなぁと思う。
「訓練中の副操縦士が操縦してたら事故るんか!」
と言いたくなる。

ニュースでも比較的この「副操縦士が操縦していた」ことが話題になっているが、
結構ニュートラルな語り口調で、それ自体が悪いとは言われていない。

もちろん日経新聞でもそれが悪いとは言及されていないが、
こんな見出しを書いてしまうと、
読者にどんな印象を与えてしまうかは考えれば分かるだろう。

「着陸直前に失速警報」という見出しの方が僕は適切だと思う。
大きい文字と小さい文字を逆にすべきだ。

思い出せば、ANA787の緊急着陸の時の社会面の見出しは「ふわっと浮いた」だった。
全く持って不適切な見出しである。

何度も言うが日経新聞のバカっぷりには本当に閉口する。

この事故の原因の本質は777の訓練中の副操縦士が操縦していたことではない。
NTSBの報告がされなくとも、それは確実に言えることだ。
もし副操縦士が操縦していたことが原因ならば、
世界中でこの類の事故が多発しているはずだ。

誰だって最初は初めてで、それを着実にこなしながら経験豊富なパイロットになっていく。
だから操縦経験が浅いことが原因にされたら、訓練自体が否定されることになる。

この事故の本質は、ほぼ間違いなくクルーコーディネーションの悪さである。
操縦経験の浅さを補うのは操縦経験の豊富な年上の機長である。
そこが上手く機能していないのが問題なのだ。

だから上の記事はタイトルをこうしてもい。
「ベテラン機長、操縦代われず」と。

ILSのグライドスロープが点検中で機能していなかったことも指摘されているが、
滑走路脇にはPAPIと呼ばれる進入角が適切であることを示す表示があるので、
それを見れば角度が浅く高度が低いのは分かる。
だからILSが点検中だったというのも原因ではない。

ILSアプローチが機能していたって、
「天気が良ければ自分で降りたい」と言うパイロットもいるので、
ILSなどなくても全く問題なく降りられるのだ。

問題はベテラン機長が何故もっと早い時点でゴーアラウンドを決断しなかったかだ。
そこには機長と副操縦士の、微妙な心理のせめぎ合いがあったんだと思う。
もしかしたら、機長は着陸まで全てを副操縦士にやらせたかったのかも知れない。
訓練中の副操縦士だって初めての空港だから自分で降りたかったことだろう。
色々な個別の心理事情がある中で判断が遅れたのだ。

僕がこの事故の一連の報道を見て、最も重要だと感じたのは
「何故判断が遅れるような心理になったのか」という点である。
そこを掘り下げずしてどうすると言うのか。

お下品なスポーツ新聞ならまだしも、
日経新聞が日本きっての専門紙であるという誇りを持っているのなら、
もっとまともな見出しでもっと堀り下げた記事を書いてもいいんじゃないかと思う。

ねぇ日経新聞さん、
低レベルなアプローチはやめて、
もっと高い視点から深いアプローチをしたらどうでしょう?


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ANA背面飛行事故の真実

Category : 航空事故
昨年、那覇発羽田行きANAのB737-700(JA16AN)が
一時ほぼ背面飛行状態になった事故について、
昨日(8月31日)、国交省運輸安全委員会から経過報告が発表された。

JA16ANtop.png

↑報告書PDFファイルはこちら。

インターネットのニュースでは専ら、

・間違って操作したことを認知するのに時間が掛かった。
・姿勢を立て直す際に操縦桿の力を緩めた。
・力を緩めなければ背面飛行には至らなかった。
・社内の操縦訓練が適切だったかについて調査を進める。

と言った趣旨の内容が目立つ。

もちろん、それはそれで重要な内容である。
だが一つ、ニュースでは触れられていない事実がある。
僕はそこにも焦点を当てて欲しいと思っている。
この事故のそもそもの原因となった部分だ。

まず、この事故の要旨だが、
機長がトイレに行っている間、副操縦士が操縦していた(実際には自動操縦)。
機長がトイレから戻る際、コックピットのドアを開けようとノブを操作した。
しかし、間違えて別のノブ(ラダートリム)を回してしまった。
というものだ。
要するに、ドアを開けようと思ったら間違えて方向舵を動かしてしまった。
ということである。

ちなみにラダートリムとは、
エンジンが片発停止した際や、航空機のバランスが若干ズレているときに、
垂直尾翼にある方向舵の中立点を動かして方向のバランスを取るための装置である。
方向(ヨー)と傾き(ロール)は航空機の運動として独立ではないため、
方向舵を動かすことによっても機体が傾くという運動が発生する。

さて。
何故ノブを間違えてしまったのか?
僕はこの操作ミスの経緯が最も重要であると思っている。

報告書によると、事故が起きたのはB737-700であるが、
副操縦士はそれ以前に同-500型に乗っていた。
実はその-500型では、「ドアロックセレクター」と「ラダートリム」のノブの位置が、
-700型と前後逆になっていたのだ。

JA16AN.jpg

報告書では、「ドアロックセレクター」を操作することは
「国内線においてはその機会は非常に少ない」と述べている。
また「ラダートリム」についても、一日の初めに動作確認をするだけで、
毎フライト必ず操作するものではないことが示唆されている。

ここが重要なのだ。
共に操作頻度の少ないノブが、派生型の前機種と前後逆になっているということは、
間違いを引き起こし易いということなのだ。

副操縦士は、
「ラダートリムは一番後ろだったから、その1つ手間のノブを回せばいいんだな。」
と思ったのかも知れない。
真相は分からないが、この報告書を読む限り、
「前機種と混同してうっかり間違えてしまった」という可能性が捨て切れない。

もちろん報告書では「前機種と混同した」とか「うっかり間違えた」とは書いていない。
だが、この写真を見る限り、
「ドアロックセレクター」と「ラダートリム」の位置の変更は、
ヒューマンエラーを引き起こし易い設計変更だったと言わざるを得ない。

各社が報じているように、
誤操作に気付くのに何故時間が掛かったかを調べることは重要である。
航空会社の操縦訓練が適切だったかを調査することも重要である。
ただ、報道されている限りの内容ではないことは明らかである。

僕はこの事故の真相を知っている人間ではないので、これ以上の議論は避けるが、
「報道だけを鵜呑みにすると、議論の『方向』を誤ることがある。」
ということだけは言っておきたいと思う。


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