悲運の超音速旅客機コンコルド【スミソニアン博物館別館にて】

Category : 博物館
前回から引き続き、最新の旅客機を紹介したい。(誤解のなきよう。博物館にある中で新しい旅客機という意味。)


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誰もが知る超音速機、コンコルドである。コンコルドは英仏が中心になって開発した人類史上初の超音速「旅客機」だ。マッハ2で飛行し、普通のジェット機が7~8時間掛けて大西洋を横断するところを、僅か3時間で横断してしまうという凄い乗り物である。


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尖った機首がコンコルドの特徴だ。丸みを帯びたデザインでは音速を超えることはできない。音速で飛ぶことにどのような障害があるのかというと、それは衝撃波である。飛行機が前進すると自分の前方に空気の壁ができる。音の速さで進む空気の壁である。飛行機が音速以下であればその壁は邪魔にはならないのであるが、音速を超えようとするとその空気の壁を突破しなければならなくなる。ここで大きなエネルギーが必要となる。

その空気の壁を突破するためにコンコルドは莫大な燃料を使用するわけであるが、そのコストと乗客が負担する料金が見合わずに、残念ながら航空輸送の概念を変える超音速旅客機にはなれなかった。細々と運航していたものの、2000年、パリで起こした墜落事故の後に全機が運航停止となり、復活せぬまま今に至っている。あの事故はコンコルドが悪いわけではなく、先発機が滑走路上に部品を落としたのが原因なのであるが、そろそろ退役かと言われていた矢先の出来事だったために、事故が退役を加速させてしまったことは否めない事実である。悲運ではあるものの、退役は時間の問題でもあったのだから、やがて来る退役が若干早まっただけなのかもしれないが…。


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近過ぎて全景が入らない。しかしコンコルドは予想以上に小さい飛行機である、というのが僕の印象である。胴体はとても細い。そして窓は異常に小さい。これで全席ファーストクラスというのだから驚きである。普通ならクレームもんである。普通の飛行機の半分の時間で到着する特急料金としてファーストクラス料金を払うのだと言えばまだ納得が行くが、こんな狭い機内で過ごしたところで、現代で言うファーストクラスの優雅な気分は味わえないはずだ。


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当時の夢の超音速旅客機が博物館でしか見られない歴史の産物と化した。ほとんど売れず、後継機は作られず、短命だったプロジェクトである。

その後、超音速機の開発は少なくなった。研究自体は行われているものの実用化に至る機体はまだ出てきてない。コンコルドの開発後、「高速移動」よりも「大量輸送」が流行ったという背景もあるが、超音速機は発生させる衝撃波で陸上を飛べなかったり、コスト高で採算が合わなかったりと、やはりそれなりの理由がありそうである。

多少スピードが遅くても安い亜音速機を選ぶ消費者心理は分かる気もする。例えば「名古屋-東京の所要時間は3分ですが、運賃は10万円です」と言われたらアナタは乗るだろうか。どこぞの初便マニアみたいに、乗ってみようと思う人はいるかもしれないが、普及はしないであろう。新幹線の10倍もの値段を払うからには、それなりの価値が必要である。1時間40分掛かってもいいから1万円で移動しようと思う人が多数を占める以上、「3分で10万円」の運賃は成り立たないのである。

技術はあるはずなのに実現しないものは世の中にたくさんある。それはどこか僕らのニーズに合わないものなのだろう。夢の超音速旅客機コンコルドは目立つ存在ではあったのだが主役にはなれなかった。とてもカッコ良くて足が速いんだけど、ずんぐりむっくりで鈍足な747の方がよっぽどモテた。もしかしたら天は二物を与えなかったのかも知れない。

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最新旅客機ボーイング707に出会う【スミソニアン航空博物館別館にて】

Category : 博物館
続いてこの博物館きっての「最新」旅客機を紹介したい。博物館となると展示されているのは古い航空機ばかり。一度も飛んでいる姿を見たことがない飛行機がズラリと並んでいるのは、それはそれで勉強にはなるが、やっぱり新しくて自分に馴染みのある飛行機を間近で見たいものである。となるともうあの飛行機しかない。Boeing707だ。Boeing707ならば僕だって見たことがある。乗ったことはないが、この目で見たことはある。しかも何度も。


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これぞボーイングの顔である。近年のボーイング機の歴史はここから始まったと言っても過言ではない。いや、過言というか、まさにこの旅客機から始まったのだ。「この顔をしているボーイング機を3つ言え」と言われたらアナタは言えるだろうか。707、727、737だ。この顔を見たらピンとくる人は航空マニアとしてそれなりに修業を積んだ証拠だ。707から始まり787へ。数字を7で挟むボーイングの旅客機はこの顔からは進化してきたのだ。


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カラーリングは現在のハウスカラーとは似ても似つかないカラーリングだが、これがBoeing707のれっきとしたプロトタイプ機なのである。


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尾翼にはBoeing707という機種名が刻まれている。実はこの飛行機、正確にはBoeing707ではなくBoeijng367‐80と呼ばれる機体である。「707じゃなくて367?なんで?」と言っても実際にそうなのだから仕方がない。Boeing707の原型はBoeing 367-80なのだ。ちなみに後ろの「-80」の部分を取って「ダッシュエイティー」と呼ばれるのが一般的である。

それでBoeing367-80とBoeing707はどう違うのか。そもそもBoeingはジェット旅客機を作るつもりはあまりなかったと言ってもいい。当時はジェット機の黎明機であまりジェット機に乗りたいという人がいなかった。航空会社としても「レシプロ機の次はターボプロップ機かな?」と思っていたくらいで、「まぁ、ジェット機はもう少し先でもいいでしょ」と考えていたらしいのだ。なのでボーイングが開発しようとしたのは給油機だった。当時、高速で飛行する戦闘機に給油するのはジェット機が最適だった。それで旅客機でコケたら給油機で生きていこうという軽いノリでBoeing367-80の開発を進めたのである。(軽いノリかどうかは知らないが…。)


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エンジンは4発。後退角の付いた翼は見るからに早く飛べそうである。そして当初のもくろみ通り、Boeign367-80は米軍に給油機(タンカー)として採用され、名称をKC-135に変えた。KC-135であれば知っている人も多いだろう。随分と老朽化が進んでいるが、米軍の給油機と言えばKC-135と言っても過言ではないくらい有名な給油機である。まもなくKC-46(767の給油機型)にその座を譲ろうとしているが、まだまだ現役で飛べる米軍タンカーである。

KC-135として採用された後、結局Boeing367-80はBoeing707として旅客機になる。そしてここで歴史的にもあまり類を見ないことが行われる。胴体を太くしたのだ。Boeing707は3-3の座席配置の単通路機だ。3-3配置を実現するためにはBoeing367の胴体径では少し足りなかった。そこで胴体の直径を6インチ(15cm)だけ太くして3-3配置を可能にしたのである。


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すなわち、このBoeing707と書かれた飛行機と実際のBoeing707とでは胴体径が15㎝違うことになる。知らなかった人は多いはずだ。KC-135とBoeing707を比べてもBoeing707 の方が胴体が太いのだ。さすがにこの機体を見て「量産型の707の方が太いじゃん」という人はいないと思うが…。

見ただけ気付いたという人はどうか教えて頂きたい。









世界で最も美しい旅客機スーパーコンステレーション【スミソニアン航空博物館別館にて】

Category : 博物館
さてさて続きは今日紹介する機体の中でも最も有名な飛行機だ。


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その名もロッキードL-1049、スーパーコンステレーションだ。「コニー」という愛称で親しまれたとても美しい形状の旅客機である。元々コンステレーション計画は、ハワードヒューズの掛け声の下、北米大陸の西から東へノンストップで飛べる機体の開発から始まった。その後胴体を延長することでこのL-1049スーパーコンステレーションと呼ばれる機体が作られた。米軍の輸送機としても採用されその名称がC-121である。(旅客型のスーパーコンステレーションが展示されていなくて非常に残念だ。)


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見よこの美しい姿を!くびれた胴体に三枚尾翼。馬のように整った顔立ち。そして長い脚。この飛行機が「最も美しい旅客機」と呼ばれる理由がとてもよく分かる。何だろう、このソソるフォルムは。スーパーコンステレーションには言葉では語り尽くせないような妖艶な美しさがあるのである。


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前胴体部をアップで見てもとても美しい。脚がすらりと長いのだ。長い脚は空港でのオペレーションを難しくするだけだが、そんなことどうでもよく思えてくるくらいに美しい。しかしこの機体で88人乗り、現代で言ったらMRJくらいのものなので、それでいてこの足の長さは反則とも言える。

スーパーコンステレーションは日本のエアラインには採用されなかったが、日本にも海外のエアラインが飛ばしていた。前回から紹介している古い飛行機となると、子供のころに読んだ飛行機の図鑑で見かけたくらいだ。しかし「ユンカース52」や「ストラトライナー」より圧倒的に「コニー」には馴染みがある。直接見たことはないけれど、コニーには何故だかとても親近感が湧く。きっと子供の頃からこのスタイルに魅了されていたせいだろう。僕はコニーのセクシーな姿を間近で見ることができて本当に嬉しかった。

と締めくくろうと思ったが、よくよく読み直してみると「セクシーだセクシー」だと言っているだけなことに気が付いた。これじゃ、女性の外見ばかりを見て中身を全く見ていないただのエロじゃないか。そんな批判にさらされそうなので、少し解説を書いておきたいと思う。

スーパーコンステレーションは当時の北米大陸横断最短時間記録を打ち立てたスピード重視の飛行機だった。今となっては大したことのない速度であるが、当時2300マイルを6時間57分で飛行したのは画期的だった。スピード狂のハワードヒューズが手掛けただけのことはあり、同世代のストラトライナーやDC-4と比べて20%も速かった。もちろんキャビンは与圧されていたので、他の飛行機は勝ち目がなかった。かくしてスーパーコンステレーションは高速長距離輸送の女王に躍り出たのである。

優美な姿とスピードを武器に世界を魅了したスーパーコンステレーション(一つ前のコンステレーション含む)。この機体は見た目だけではなく性能でも当時の最高水準であったのだ。

ちょっと解説足りませんかね?









【緊迫感ゼロ】JAL機がエンジントラブルで緊急脱出を行った件について

Category : 航空事故
JALのB737-800が新千歳空港でエンジントラブルを起こし、緊急脱出を行う事態にまで発展した。現時点までの事故原因の推測は、激しい降雪の影響でエンジン内部に着氷し空気の流れが悪くなってオイルが異常加熱したというものである。(本記事を書いている時点のWEB情報による。正しい原因である保証はない。)

エンジンがトラブると結構な確率でキャビン内に煙が充満する。これはエンジンが絡んだインシデントの典型だとも言える。何故エンジンとキャビンが関係しているかって、それはエンジンから与圧・空調に使う空気を取り込んでいるからだ。もっと簡単に言えば、エンジンから吸い込んだ空気をエアコンに使っているということである。

取り込む空気のことを抽気(Bleed Air)と呼び、Bleed Air System(抽気系統)と呼ばれる立派な系統も作られている。航空機システムでいうところの与圧系統、空調系統の前段にいるのが抽気系統であると思ってもらえばいい。そういうわけで、エンジンが過熱したりすると、この抽気系統から煙を取り込んでキャビンに流してしまうわけである。

ボーイングの飛行機では787から、エンジン抽気を与圧・空調用には使わなくなった。抽気を取るにはとるのだが、エンジン内のインテーク防氷に使うのみだ。だから787では同様のエンジントラブルによるキャビン内への煙の充満という事故は起こり得ないのではないかと思っている。まぁそれは余談として、今回は737という従来型の抽気系統を持つ飛行機で起きた事故であるため、当然のごとく煙の混じったエンジン抽気がキャビン内に入り込んだ。

この事故では出発を諦めゲートに戻ろうとした際に緊急脱出を行った。もしかしたらスポットまでは走っていきそのままブリッジに着けて乗客を降ろすという決断もあったかもしれない。しかし機長は「これはマズい」と感じ、あの大雪の中に乗客を放り出した。なかなか難しい決断だったと思う。相当煙が充満したという人もいれば、匂いは酷かったが煙は見えなかったという人もいる。実際にどれだけ事態が深刻だったかは、当事者しかうかがい知ることはできないが、強烈な異臭に「スポットまで戻れない」と感じたパイロットがあの雪の中、緊急脱出を決断したことは事実である。

緊急脱出を行うほどの事故は滅多に起こらない。そういう意味で今回の事故は非常に稀な事故である。それ故に報じられるときのインパクトは結構大きい。脱出シュートを降りる乗客の姿は緊迫感を映し出し、マスコミにとっては格好のネタである。しかし今回の事故は飛行前に起きたということや、実際に火災が起こっていないこともあり、「実は大した事故じゃなかった」というのが「声には出さないけどみんなそう思っている事実」になっている気がする。

乗客の余裕の脱出が滑稽である。外からスマホで動画を撮っている人はまだマシなほうで、脱出用シュートを降りながら撮っている人もいた。いかに緊迫感のない脱出劇だったかがよく分かる。「キャー」とパニックになっている人がいたとあおるマスコミ報道もあるが、それはごく一部であり、映像を見る限り大部分の人が笑顔だ。薄着で逃げている人は少しかわいそうではあるものの生命の危機のようなものは全く感じ取れない。

既に記事にも上がらなくなった今日だが、面白いのは、最近はライブ感を持った映像が続々と出てくるようになったことだ。皆スマホで動画を撮影するようになり、マスコミのような仕組まれた映像は少なくなった。個人の動画は手ブレがひどく見にくいものの、事態をリアルに写すものがほとんどだ。マスコミは都合の悪いものは写さないが、個人はありのままを写す。だから緊迫感のない脱出劇だとすぐにバレる。

マスコミはこの事故を無理やりまともに報じ過ぎであり、「寒いところに放り出された」とか「20分も外で待たされた」とか「ろくな説明もなしに見舞金を渡された」とかそういうJALに対する不満のコメントを流しているが、気付いている人は気付いているように、実は大した事故ではなかったのである。JALは何も悪くなく、機長が適切な判断を行っただけの話だ。

「いいネタが撮れたと」か言って笑っているヤツらがいることをもっと報じて欲しいものだ。「JALの対応が悪い」とかそんなありきたりな内容は放送しなくてもいいから、「実は機内は冷静だった」とか「いかに個人が自己中心的に振る舞ったか」とか、たまには別の視点で報じて欲しいものである。

最後に。「脱出の恐怖」を引き出そうとするインタビューはナンセンス。今回は逆に「恐怖なんか感じました?(感じませんでしたよね?)」的な聞き方をしてもいいくらいだ。「航空事故=恐怖」なんて構図は既に崩壊しているのである。そこに気付けよ。









ユンカース52とストラトライナー【スミソニアン航空博物館別館にて】

Category : 博物館
スミソニアン別館。それでは歴史に名を残した名機を探しに行こう。と言っても広すぎて何から見たらいいか分からない。とりあえず入って右側は軍用機、左側が民間機だから旅客機好きには左から回るのがおススメである。

まずは古くて小さいのから。


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ユンカース52。ドイツが開発した3発機である。フォードが開発したトライモーターと外見が非常に似ている。しかし実際はトライモーターが高翼、こちらのユンカース52が低翼であるので全然違うが、僕はこの機体を見て「これってトライモーター?」と間違ってしまいそうになった。しかも波打った四角い胴体もトライモーターにそっくりだから驚きである。


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説明を読むと、最も成功したヨーロッパの旅客機の一つであると書いてある。またこの飛行機は17人と3トンの貨物を積み、短距離離着陸能力に優れていたそうだ。

調べるとJu-52の後ろにつく3mは3 motor、つまりエンジン3発を意味するらしい。どうやら元々Ju-52はシングルエンジン(単発機)だったようで、その3発バージョンがJu-52/3mというのだ。離着陸性能、巡航性能、安全性を考えると単発じゃ商品にならないのだろう。3発あって一人前。当時はそんな時代だったのである。

そう言えば、エンジンが3発以上ないと太平洋を超えられない時代なんてのがつい最近もあった。その時に活躍したのがDC-10でありL-1011(トライスター)である。僕にはこちらの方が馴染み深いが、両機も時代の流れとともに消えていった。

このユンカース52が消えたのは、DC-10やL-1011のときのように双発機の信頼性向上が原因ではなく、ユンカースそのものの足の遅さや機体構造の古さがその要因となったようだ。

さて続き。


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こちらのピカピカの飛行機はボーイング307ストラトライナーである。ストラトライナーとは「成層圏旅客機」を意味し、当時としては20,000ftを航行できる世界初の与圧式航空機であった。


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元々のこの旅客機はボーイングの開発したB-17(爆撃機)を旅客型にしたものである。原型の翼、尾翼、エンジンをそのまま引き継ぎ胴体だけ太いのをつけたという感覚である。

ピカピカのボディに旅情をそそられた人は多いはずだ。いつかあんな飛行機で空の旅をと誰もが思ったことだろう。しかし当時のアメリカは戦争三昧、ライバルのDC-4とともにストラトライナーは軍用に徴用された。トランスワールドやパンナムが購入したものの、10機で生産を終了したのは非常に残念なことだ。

ちなみに原型であるB-17はその後順調に爆撃機として地位を上げ、トータル1万2千機というバカ売れを記録したのである。旅客機と爆撃機が同じ飛行機だったなんていう話は現代からすると何だかおかしな感覚を持ってしまうが、当時としてはごくごく普通の話である。

いやぁ歴史を感じさせるねぇ。









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