アシアナ航空A320、広島空港で着陸に失敗【報道の正確性について】

Category : 航空事故
番組の途中ですが、急遽番組を切り替えて放送します。

アシアナ航空が広島空港で事故を起こした。上空から撮影した画像を見たり、色々な報道記事を読んで、アシアナ航空のA320は、

ローカライザーアンテナに接触した

とうのがどうやら事故の直接的な原因のようである。

サンフランシスコでも空港の護岸に脚を引っ掛けて着陸に失敗した事故が思い出されるが、

アシアナはまた手前で引っ掛けたか!

という印象を強くする事故である。「何でそんなに手前に降りるの?」と。
(過去記事:アシアナ航空サンフランシスコでの着陸失敗事故の真実)

サンフランシスコの事故は進入時の速度が問題であったが、今回はどうやら視界不良が大きく関係しているようである(推測)。(事故原因はサンフランシスコとは全く異なると思われる。)

さて、今回アシアナのA320はどのような進入を行っていたかであるが、このチャートを頼りに少し解説したい。(どれが正しいか分からない報道を頼りに、最も可能性の高い事柄を推測して書いている。)

当時、広島空港では東側から進入を行っていたようで、進入方式としてRNAVアプローチを使っていた模様である。

RJOA-RNAV28-01.png

このRNAVアプローチとは、FMS(Flight Management System)の誘導を頼りに降りる方法である。空港に設置された着陸装置からの電波に頼らず、自分の持っている装置だけで考えて降りるという最近主流になっている少しインテリジェントな進入方式だ。特に変わった進入ではなく、ごく一般的に使っている方式である。

19人乗り以下のコミュータ機を除けば、最近の航空機のほとんどは離陸直後からLANV/VNAVと呼ばれる横と縦の自動操縦を使用しており、飛行するコースを事前に作っておけばLNAV/VNAVが自動で航空機をコースに沿って飛ばしてくれる。以前、着陸時にはLNAV/VNAVを使用できなかったのであるが、装置の精度の向上により着陸直前までLNAV/VNAVが使えるようになった。分かりやすく言えば、

着陸直前までLNAV/VNAVを使う

というのがRNAVアプローチと呼ばれるものだ。

チャートにも(GNSS)とあるようにGPSからの電波を受信しないと成り立たない方式ではあるものの、基本的には外部の無線航法施設(VOR、ILSなど)に頼らずに飛行できる方式として、最近多くの空港に設定されつつある着陸方法である。世の中は無線航法施設を廃止していく方向にあり、外部施設に頼らず自律的に自動操縦できる方式にシフトしてきているのである。

ただこの方法は、視界が悪い時にはあまり有効ではなく、電波を使用して降りるILSよりは精密度が低い。もう少し具体的に言うと、「精密進入」と呼ばれるILSアプローチよりも高い高度で滑走路が見えないと着陸できない方式である。ちなみにRNAVアプローチは「非精密進入」の区分である。

チャートの赤丸部分がそれを表していて、MAPtというのはMissed Approach Pointという意味であり、滑走路が対地(着陸地点から見た高さ)433フィート(131m)まで降りたところで見えなければ、着陸をやり直さなければいけないことを意味している。

広島空港では、今回とは反対側の滑走路から降りた場合、ILSが使えるため、着陸のやり直しを決める高度は、最も精度が悪いもの(CATI)を使ったとしても、200ft(61m)である。ILSの方がより低い高度まで降りられることになっている。つまりILSの方がより視界が悪くても降りられるというわけである。

ただ、今回はILSで降りられる方向とは逆向きの滑走路を使っていたため、RNAVアプローチを使用していたと思われる。使用する滑走路の向き風向きによってほぼ自動的に決められる。(向かい風で着陸するように滑走路の使用方向は決まる。)

大体それがRNAVアプローチの解説だ。


では、色々な報道記事を読んで僕が感じたことを書きたい。事故原因はまだわかっていないのであれこれ言うのは避ける。何故なら、事故原因が分かる前にアレコレ言ってしまうと、後から「ギョッ」とするような事実が現れて、思いもよらない事故原因だったということにもなりかねないからである。

僕は自分のブログで、航空事故関係の報道記事の正確性、適切性についてアレコレ文句を言っているので、今回もその類の記事だと思って読んでもらえれば嬉しい。


<1つ目の記事>
アシアナ機、精密誘導なしで着陸 超低空で進入か

記事では、「パイロットが着陸機を電波で誘導する精密な計器着陸装置(ILS)を使えない状態で着陸した」と書かれており、「同局によると風向きの影響で、装置を使えない滑走路の東側から入るように管制官が指示を出したという。」と続いている。

この記事をなんとなく読んでしまうと、「パイロットはILSを使いたかったのに、ILSを使えない方向から進入しろと管制官に言われたので事故に遭遇した」みたいに捉えられてしまう可能性があり、不適切な記事だと思う。

確かに書いてあることは間違ってはいない。空港にはその時間の使用滑走路方向というものがあり、基本的に管制官から指示されるものだからである。ただ、この事故では管制官は何も悪くないと思われるのでそこに注意して読まなければ、事故の本質を間違えてしまいそうである。


<2つ目の記事>
事故直前までレーダー正常に機能~広島空港

はっきり言ってお粗末な記事。こんなことが書いてある。

「広島空港事務所は15日午前に会見を開き、レーダーが正常に機能していた事を明らかにした。」続いて、「広島空港事務所・久貝誠総務課長「装置については事故発生の直前まで正常に作動していたとの報告を受けている」と書かれている。

そもそも東側から進入する際には、ILSは使わないので「装置(レーダー)は正常に作動していた」というのは全く持って妙な回答である。(ホントに広島空港がそう説明したのか?画像が見られないので未確認)

記事の前半に、「滑走路手前に設置された、誘導用に進入方向と幅を示すローカライザー(誘導用レーダー)は破損し、機体が接触した可能性が出ている。滑走路手前の地面はえぐられ、その先で停止した機体にはレーダーの一部とみられる部品が引っかかっていた。」とあるので、上記のレーダーというものは進入管制用のレーダーではなく、ローカライザーを指すものと思われる。(ローカライザーはそもそもレーダーじゃないけど…。)

「使用していないローカライザーが正常だったこと」は今回の事故と全く関係がないので、この記事は全く持って意味のない、そして価値のない記事である。


<3つ目の記事>
アシアナ機事故は手動着陸の「滑走路28」 操縦ミスか

これは非常に適切な記事である。ただタイトルがあまりよろしくない。「手動着陸」という部分がダメで、「非精密進入」とするのが正しい。確かに最後の最後は手動で着陸するわけだが、ILSだって一部の超精密なものを除いて最後は手動で着陸させるわけだし。逆にRNAVアプローチだって着陸直前までは自動で進入を行うことが出来る。ILSもRNAVも途中まで自動で、最後は基本的に手動。両者でそこは同じなのだから、「手動着陸が云々」とタイトルに書いてしまうとやや誤解を招く気がする。しかし、タイトルを除けば非常に詳しく、そして正しく書いている記事である。


たまに航空事故があると、僕はブログに、

報道は疑って読まないといけない。

と書いているが、まさに今回もその通りのことが起こっている。ニュース報道は、専門家の書くもの以外、基本的に素人が取材をして素人が書いているため、内容に間違いがあることもあるし、全く持ってトンチンカンなことを書いているものもある。

玉石混交の記事の中から「アタリ」を見つけるのは難しい。読者の方々も、注意して報道記事を読んで欲しいと思う。


いつも見て頂きありがとうございます。
↓ポチっと押すとランキングに一票が入ります。
にほんブログ村 その他趣味ブログ 航空・飛行機へ
にほんブログ村
スポンサーサイト









Comment

非公開コメント

サイト内検索
イケてる航空旅行研究所内の記事を検索できます。
カスタム検索
プロフィール

航空ブロガー

Author:航空ブロガー

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
Google+
GoogleAnalytics
サイト内検索
イケてる航空旅行研究所内の記事を検索できます。
カスタム検索